家族の来歴

                   矢島鈴子


わが家はいま、ヒト四人にイヌ四頭という家族構成になっている。人間は息子夫婦に孫一人、それに私であるが、犬の方はチビ太にキコ、ハナコ、そしてサクラという、それぞれ来歴の異なる四頭である。番犬一頭ぐらいはと思っていたのだが、いつしか一頭また一頭と家族の一員に加えられ、大家族になった。
最初に貰われてきたのは、ころころとかわいい茶色の子犬で、チビ太と名付けられた。今ではもう私と同じく高齢者の部類に入るのに、名前は相変わらずチビ太のままである。
二番目はキコといい、息子が一時勤務していた看護学校からやってきた。学校に迷い込んだ捨て犬で、しばらく学生たちのマスコットになっていたが、引き取り手がなく、息子に白羽の矢があたったらしい。「先生のところ、お寺だから広いでしょ。お願い、飼って」と学生たちにせがまれて、抱いてきたのがキコである。美しい純白の犬で、初めは「キコさま」と丁重に扱われていたが、閉じた戸も自分で開けて室内を歩き回るやんちゃぶりに、たちまちキコと呼び捨てられるようになった。
明日から春彼岸という日、こんどは丸々とかわいい二匹の子犬が寺に捨てられた。これには目撃情報があった。誰かが車から子犬を捨てるや、あとは宜しくといわんばかりに走り去ったという。この緊急の事態にどう対処するか家族で話し合ったが、とにかく貰い手が見つかるまでは置いてやろう、ということになった。幸い一匹は、彼岸の墓参りにきた檀家さんが引き取ってくれたが、あとは貰い手がなく、ハナコと命名されて飼うこととなった。このハナコはよく吠える。そして変わっているのは、せっかく作ってやった犬小屋に決して入ろうとしないことである。結局、彼女は本堂の床下が気に入り、そこを住まいとするようになった。庫院の私の部屋に近いので、いわば専用の番犬のようなものである。
この三頭でもう限界、これ以上は飼えませんよと、口々に言い合っていたのだが、最近になって、とうとう四頭目が加わった。朝の散歩に出た息子が、生まれて間もない黒い子犬を抱えてきたのだ。竹やぶの中に袋に入れられて捨てられていたという。紐で結んであったのを、やっとの思いで袋を破り、外に出てぶるぶると震えていたところを犬たちが発見し、吠えて息子に教えたという。
「早く貰い手を探してね」と、私も嫁も息子に繰り返していたが、一週間ほど経ったある日のこと、嫁が「サクラ、ご飯よ」と子犬に呼びかけている。ついに名前がついた。OKのサインである。「三匹も四匹も同じだよ。よかったなあ、サクラ」と、息子も相好を崩している。イヌも四頭ともなれば、やれ不妊手術だ、やれ予防注射だと出費もかさむが、何とかなるだろう。縁あって身近な存在となった尊いいのちである。お互い言葉は交わせないが、以心伝心というか、通い合うものはある。

吠えること犬のすべてや夏木立   鈴子